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揺動メディアについて。場所と風景と映画について。

李相日『悪人』2010年


悪人

 

吉田修一による同名小説の映画化。佐賀で平凡な生活を送ってきた紳士服量販店員の光代と、図らずも殺人犯となってしまった長崎の土木作業員・祐一が出会い系サイトを通じて知り合い、逃避行に出る。


ジャーナリストの三浦展は、携帯電話やインターネットの普及によって、従来は繁華街や飲屋街などに限定されていた「悪所」(地域共同体の目が届かず、犯罪を誘発させやすい匿名的な空間)が各地に偏在するようになったと指摘しているが(『ファスト風土化する日本——郊外化とその病理』洋泉社、2004年)、『悪人』に描かれるのはまさにこうした悪所の問題だと言えるだろう。

 

祐一が出会い系サイトで知り合った女・佳乃を突発的に殺してしまうことも、県境の山道で事件が起きたため警察の捜査が難航することも、光代が出会い系サイトで殺人犯の祐一と出会い運命を狂わされることも、本作の重要な事件はすべて匿名的空間で起きているのである。

 

悪人 (特典DVD付2枚組) [Blu-ray]

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