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揺動メディアについて。場所と風景と映画について。

片岡K『インストール』2004年

 
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不登校の女子高生・朝子は、自室にあるものすべてを処分しようと出かけたゴミ捨て場で、同じマンションに住む小学生のかずよしと出会う。かずよしは、朝子が昔祖父からもらったのだというパソコンを譲り受け、新しいOSをインストールした上で、一緒にアダルトチャットでバイトをしないかと提案。二人は「コケティッシュチャット館」というサイトで人妻「ミヤビ」に成りすまし、大人たちの世界を垣間見ていく。


綿矢りさによる同名小説の映画化。原作と同様、物語は朝子のモノローグによって進行するが、演じる上戸彩のゆったりとした語り口は、句読点が少なく一気に畳み掛けるような綿矢の文体とは異質であり、結果、朝子の人物像は大きく変わっている。他方で監督の片岡Kは、例えばチャット相手の本当の職業を推測するシーンなど、朝子の想像や妄想の内容をその都度視覚化し、場面転換の多い賑やかな印象をつくり出すことで、原作のスピード感を再現しつつ、ネット映画の視覚的地味さの問題にも対処しようとしている。

 

インストール (河出文庫)

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