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田中登『妖女伝説'88』1988年

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「新人類を超えた次世代電脳遊戯人」として注目される若きプログラマー・赤木慶太のもとに、江本聡美と名乗る女性からパソコン通信でメッセージが届く。高度な画像送信技術で送られてきた聡美の顔写真を見て彼女に一目惚れした慶太は、その正体を突き止めようとするが、逆探知はできず、電話もつながらない。それでも諦められない慶太は聡美の知り合いを探し出し、聡美が1年前にアメリカのアリゾナ砂漠で自殺したこと、彼女の姉・律子が南足柄の新興宗教の社で巫女をしていることを知る。事情を聞いた律子がパソコンの前でお祓いをしようとすると、聡美は律子の身体に憑依。慶太の前に姿を現わす。


ロマンポルノの巨匠・田中登が監督した最後の映画作品(その後はテレビドラマの仕事を続けた)。パソコン通信を題材にした「ネット映画」前史のフィルムであり、モニタ越しの恋愛は『(ハル)』(1996年)や『接続 ザ・コンタクト』(1997年)に先駆けており、電脳空間に棲み込む幽霊というモチーフは『ヴァイラス/インターネットの殺人鬼』(1993年)や『回路』(2000年)に先駆けている。


作中には、日本の企業アスキー(ASCII)が実名で登場し、そこで慶太が開発を進めているファミコンゲーム『ダンジョン放浪記』は現実に発売が予定されていた(結局お蔵入りとなるが)。また、ゲーム開発のシーンに麻原彰晃がモデルと思しきキャラクターのイラストが映し出されることにハッとさせられる。パソコン通信、ゲーム産業、バイオテクノロジー、試験官ベビー、そしてテクノロジーやサブカルチャーと密接に結びついた新興宗教と、『妖女伝説'88』には当時の「最先端」が詰め込まれているのだ。

 

妖女伝説’88 [VHS]

妖女伝説’88 [VHS]