アレックス・ウィンター『スモッシュ』2015年
SMOSH: THE MOVIE (OFFICIAL TRAILER)
実家暮らしでネット三昧のアンソニーと、冴えない自分を変えるためピザの宅配を始めたイアンのもとに、高校卒業5年めの同窓会の知らせが届く。イアンは想いを寄せるアナとの再会を期待するが、その直後、卒業パーティーでの大失態の様子がYouTubeにアップされていることに気づく。この動画をアナに見られたら、負け犬時代の自分を思い出させてしまう。そう考えたイアンはアンソニーとYouTube本社に赴き、動画の削除を懇願。CEOのスティーブ・ユーチューブによって「YouTubeの中」に送り込まれ、動画の内容をつくり変えるべく奮闘する。
世界のYouTuber年収ランキングで常に上位に位置するスモッシュ(Smosh)のアンソニー・ペディラとイアン・ヒコックスが実名で主演したコメディー。音声アシスタント・ディリ(Siriのパロディ)に導かれ、様々な動画の世界へ転送されていくという物語展開にかこつけて、ふだんスモッシュがYouTubeに投稿している短編動画を羅列し、つなぎ合わせたような構成をとる。
これはスモッシュ本来の魅力を最大限に引き出すための戦略だろうが、十全に機能しているとは言い難い。YouTube周りのネット文化に慣れ親しんでいなければピンとこないハイコンテクストなギャグが散りばめられ、初見の敷居を上げている一方で、著作権的に問題のあるパロディや際どいギャグは必要最低限に抑えられており、毒気の抜けた、牧歌的な印象が付きまとう。Googleが全面協力した『インターンシップ』(ショーン・レヴィ、2013年)と同様に、映画という制度が抱えるしがらみの多さやフットワークの重さが足枷となっている一例とも言えよう。
なお、監督のアレックス・ウィンターは『ビルとテッドの大冒険』のビル役で知られる俳優・映画監督・脚本家で、近年は『ディープ・ウェブ』や『Downloaded』などのネットドキュメンタリーの制作も手がけている。