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佐々木友輔×渡邉大輔「『シネマ』と『人間』の彼方に何があるのか?——『人間から遠く離れて——ザック・スナイダーと21世紀映画の旅』&『ゲンロン5』刊行記念イベント」

 

2017年8月27日(日)に、ゲンロンカフェで『人間から遠く離れて——ザック・スナイダーと21世紀映画の旅』の刊行記念イベントがあります。初のゲンロンカフェ出演、ザック・スナイダーの作品を見ていなくても&映画に詳しくなくても楽しめる話題をたくさん用意してお待ちしておりますので、ぜひぜひご予約・ご来場ください。

 

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 渡邉大輔氏とは長い付き合いになりますが、公の場でじっくりお話するのは久しぶりな気がします。拙著『人間から遠く離れて――ザック・スナイダーと21世紀映画の旅』については、言いたいことは文中で書ききってしまったので、渡邉氏から率直なご感想・ご批判をいただくのを楽しみにしつつ、ここでは、『ゲンロン5』所収の「「顔」に憑く幽霊たち――映像文化と幽霊的なもの」を拝読して、当日ぜひ議論ができればと思ったことを二つ記しておきたいと思います。

 一つ目、「幽霊的身体」の実存と倫理。黒沢清『岸辺の旅』やアピチャッポン・ウィーラセタクンのフィルムに登場する、平然と人間たちと相互干渉する幽霊たちは、たしかに全然怖くない。けれど他方で、そこには、かつての幽霊映画とは別種の「怖さ」や「不気味さ」が宿っているようにも思えます。例えば、いつ醒めるとも知れない眠りや夢の不穏さが漂う『光りの墓』(アピチャッポン)と『エンジェルウォーズ』(ザック・スナイダー)。エクソシズムという定番の題材を扱いながら、情報社会における人間の悪意(悪魔憑き)を描いているとも読むことができそうな『死霊館』&『インシディアス』シリーズ(ジェームズ・ワン)。実写とCG・VFXという異なるルールを一つの身体に宿したヒーローたちの分裂と痛みを描く『アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン』(ジョス・ウェドン)、『マン・オブ・スティール』『バットマンvsスーパーマン』(ザック・スナイダー)……。『人間から遠く離れて』共著者のnoirseが言うように、これらのフィルムに触れることは、SNOWやInstagramで自らのイメージを仮構=加工しながら、今の所まだ生身の肉体を手放すことができずにいる人間たちの実存に触れることと同義ではないでしょうか。そしてまたここには、レヴィナス的な「顔」とは異なる倫理を打ち立てるためのヒントが隠されているのではないでしょうか。

 二つ目。「ポストシネマ」について語ろうとしているわたしたちは、なぜこうまで「シネマ」あるいは「映画」にこだわらなければならないのか。先にも触れたSNOWやInstagram、あるいはアニメや海外ドラマの隆盛ぶりや軽やかさと比べると、長い伝統や慣習、そしてカメラが介在するがゆえの指標性に縛られた映画は、あまりにも鈍重で、不自由なものと見なされがちです。しかしもちろん、わたしが今も映画を撮り続けるのは、引っこみがつかなくなって意地を張っているからでもなければ、歴史遺産として保護したいからでもありません。他のメディアや芸術には不可能な、映画だからこそできることがまだまだあると信じているからです。そしてきっと渡邉氏も、同様の確信を持って、映画研究や批評に携わっているのではないかと想像しています。そんなわけで、現状を冷静に分析するだけではなく、「今の映画ってこんなに面白い!」「関わらなきゃ損だよ!」という積極的なアジテーションができれば……!!と思っているのですが、渡邉さん、いかがでしょう?(佐々木)
 
【当日扱うかもしれない作品リスト】
ザック・スナイダー『エンジェル ウォーズ』(2011)
ザック・スナイダー『マン・オブ・スティール』(2013)
ザック・スナイダーバットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)
ジョス・ウェドンアベンジャーズ』(2012)
ジョス・ウェドンアベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)
マイケル・ベイトランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)
マイケル・ベイトランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)
・ナチョ・ビガロンド『ブラック・ハッカー』(2014)
・ナチョ・ビガロンド『シンクロナイズドモンスター』(2016)※日本公開2017年11月
ジェームズ・ワンインシディアス』(2011)
ジェームズ・ワンインシディアス第2章』(2013)
ジェームズ・ワン死霊館』(2013)
ジェームズ・ワン死霊館 エンフィールド事件』(2016)
・ブリット・マーリング、ザル・ バトマングリ『The OA』(2016)
アピチャッポン・ウィーラセタクンブンミおじさんの森』(2010)
アピチャッポン・ウィーラセタクン『光りの墓』(2015)