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揺動メディアについて。場所と風景と映画について。

イーライ・ロス『グリーン・インフェルノ』2013年


11/28(土)公開『グリーン・インフェルノ』特報

 

『ホステル』(2005年)のイーライ・ロスが監督したスプラッター・ホラー。


アレハンドロという名のカリスマが組織した活動家グループが、天然資源の乱開発を進める企業を止めるべく、アマゾンの奥地に向かった。彼らは抗議運動の様子をスマホで撮影してウェブ配信し、大きな評判を呼ぶ。しかし意気揚々と帰路についた直後、彼らを乗せた小型飛行機が事故で墜落。ジャングルで生存者たちを待ち構えていたのは、人食い人種と噂されるヤハ族だった。


2012年、ウェブ動画で私刑を執りおこなう大学生グループについての脚本を執筆中だったロスは、NPO団体インビジブル・チルドレンが制作した「KONY2012」という動画の存在を知る。「KONY2012」はウガンダ共和国の反政府ゲリラによる非道を告発する人道キャンペーンとして大きな注目を集めたが、同時に事実の歪曲や寄付金の不透明な使途などが批判に晒され、心身を病んだ主導者ジェイソン・ラッセルが奇行に走って逮捕されるという顛末を迎えた。ロスは、こうした活動がスラックティビズム(労力をかけずに社会に良い影響を与えたつもりになっている自己満足行為)に過ぎないと評価を下すと共に、自らの脚本のアイデアに自信を得て、『グリーン・インフェルノ』の制作へと進んでいったのだという(プロダクション・ノーツより)。


日本では「意識高い系」と呼ばれるようなタイプの人々を痛烈に批判するフィルムである。しかし、上っ面の正義や善意を揶揄するために「野蛮な先住民族」というステレオタイプが利用・再生産される光景は──日本語版ウェブサイトで、撮影に協力したカラナヤク族は協力的で楽しんでいたというエピソードが紹介されることも含めて──ポリティカル・コレクトネスやリベラルへの不満と揶揄が噴出する現在のウェブ空間の状況とあまりに親和的だ。『グリーン・インフェルノ』自身もまたインターネットの外部ではあり得ず、その生態系の内部に組み込まれているのである。