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揺動メディアについて。場所と風景と映画について。

宮藤官九郎『少年メリケンサック』2009年


少年メリケンサック(予告編)

 

宮藤官九郎の監督第二作。

レコード会社で新人発掘を担当する栗田かんなは、パンクバンド・少年メリケンサックのライブ動画がmixiにアップされているのを見て興味を持ち、パンク世代の社長の後押しを受けて、彼らのスカウトに赴く。しかし実はその動画が撮られたのは25年前で、少年メリケンサックはとっくの昔に解散。メンバーはみなやさぐれた中年になっていた。かんなは事情を報告しようとするが、先走った社長がライブ動画を自社のウェブサイトに無断転載し、10万アクセスの注目を集める事態となっていた。後戻りができなくなったかんなは少年メリケンサックを強引に再結成させ、何とかツアーを成功させようとするが……。

日本初のSNSであるmixiが2004年に始まり、ネット利用者の裾野はさらに拡大した。当時、mixi内で近い興味や関心を持つ者が集う場として設けられた「コミュニティ」には、まるで同窓会のような雰囲気が漂っていたことを思い出す。長らく疎遠だったバンドメンバーと思いがけず再会したり、自分以外に知る者が居なかった幻の名盤について熱く語り合ったり……。「25年前のライブ動画が10万アクセス」「伝説のバンドの再結成」「若者へのパンクスピリットの継承」といったささやかな夢と希望を直球で描き出す『少年メリケンサック』は、SNSという新たなコミュニティ開拓時代の空気を克明に記録している。

 

少年メリケンサック [Blu-ray]

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