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揺動メディアについて。場所と風景と映画について。

小田原のどか個展「STATUMANIA 彫像建立癖」について

アート メモ

 

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小田原のどか個展「STATUMANIA 彫像建立癖
会期:2017年3月4日(土)-3月19日 (日)
時間:平日 13:00-20:00/土日祝 12:30-20:00
会場:ARTZONE
企画:京都造形芸術大学ARTZONE

 

現在開催中の小田原のどか個展「STATUMANIA 彫像建立癖」については、すでに優れた評論が寄せられているので(「爆心地のネオンサイン」 )、ここでは個人的な雑感を記しておくことにする。

 

展示会場に足を踏み入れて、いまはもう存在しない、しかし写真やネオン管の彫刻として復元された無数の矢印に出迎えられ、まっ先に想像したのは映画『リング』だった。呪いのビデオテープにおさめられた、なにかを指差す不気味な人影。人間が立っているから怖いのではない。指を指しているから怖い。

これを見ろ。目を離すな。忘れないで。覚えていろ……

二階に上がると、今度は黒沢清の『リアル~完全なる首長竜の日~』だ。ガラス管でかたちづくられた台座を支えるケーブル、バンド、配線のようなもの、黒いボックスが剥き出しになっている。『リアル』に登場する、意識を失った者と交信するための「センシング」装置。あるいは『秘密 THE TOP SECRET』に登場するMRI捜査の装置を思わせる光景が、目の前にひろがっていた。

会場全体が、まるでマッドサイエンティストの実験場のようだ。死者を生き返らせる装置ではなく、脳に電気信号かなにかを流して、死んだままの身体だけを叩き起こす装置。人工的なゾンビたちがうごめく風景。

しかしそれは作家個人の趣好などではなく、人類全体の趣好なのだ。展覧会タイトルは「彫像建立癖」だが、もっと広くとらえて、「保存再生癖」、「アーカイブ構築癖」と読み替えてもよいのかもしれない。小田原は少し引いたところから、その欲望が生み出したものを冷静に見つめている。

これを見ろ。目を離すな。忘れないで。覚えていろ……

そう語りかけてくるのは、死者ではなく生者であった。おそろしいのは幽霊ではなく、死者に鞭打ち動かし続けようとする、生者たちの情念であったのだ。記憶と記録は常に不完全でしか有り得ず、それゆえ、その欲望はどこまでも、いつまでもわたしたちにつきまとう。しかしつきまとっているのもまた、わたしたち自身である。

 

 (念のため、上記のおどろおどろしい話は、なんでもホラー的に見てしまう筆者の傾向が多分に反映された結果であって、展示自体は決して観客を脅かすようなものではなく、洗練された、落ち着いた空間だったことを記しておく。)