清水増夫氏インタビュー「文化のための映画制作支援──鳥取から、地域と映画の理想的関係を考える」
にんげん研究大発表会2017
鳥取県湯梨浜町の滞在複合スペース「たみ」を拠点として活動している、にんげん研究会(通称にんけん)の発表会があります。
わたしは8月5日(土)15:45からの2ndセッション「メディア/市民/制度」に参加します。登壇者はアートマネジメントを専門とする五島朋子先生と、「たみ」の蛇谷りえさん。「一人一人のにんげんが、演劇・映像・場所などのメディアを通じた社会との関わりや、制度について考える」場になるとのこと。
鳥取近辺にお住いの方は、ぜひご予約・ご参加ください。
ningenkenkyuukai.hatenablog.com
トポフィル新刊『人間から遠く離れて──ザック・スナイダーと21世紀映画の旅』
トポフィル5冊目の書籍が刊行されます。『300〈スリーハンドレッド〉』『ウォッチメン』『エンジェル ウォーズ』『バットマンvsスーパーマン』など、数多くの問題作を世に送り出してきた異形の映画監督、ザック・スナイダーを中心に据えた、21世紀ハリウッド映画論です。
わたしの知る限り、ザック・スナイダーの仕事を総合的に追い、論じた作家評論本はこれが世界初。アメコミ・ヒーロー映画の観点のみならず、宗教映画やデジタルシネマの観点からもスナイダーの特異性を掘り下げ、その作家像の刷新を図っています。
刊行予定は8月1日、どうぞお楽しみに。
※amazonでの予約も始まりました!
書誌情報
書名:人間から遠く離れて──ザック・スナイダーと21世紀映画の旅
著者:佐々木友輔、noirse
発行日:2017年8月1日
造本:小田原のどか
発行:トポフィル
判型:四六判、ハードカバー(384頁)
定価:2,300円+税
目次
- はじめに──旅の手引き(noirse)
第Ⅰ部 ザック・スナイダー論
1 聖なる映画作家
2 機械仕掛けの生
- 速度の映画について──マン・オブ・スティールに触れる(佐々木友輔)
- ゲームの国のアリス――ゲーム映画試論、または『エンジェル ウォーズ』論(noirse)
3 ザック・スナイダー作品解説
- 人間、ザック・スナイダー(佐々木友輔)
- スローモーション・オブ・ザ・デッド──『ドーン・オブ・ザ・デッド』(noirse)
- 筋肉はサヴァイブする──『300〈スリーハンドレッド〉』(noirse)
- 発光体について──『ウォッチメン』(noirse)
- フォースは砂嚢に宿る──『ガフールの伝説』(佐々木友輔)
- 千の顔を持つ英雄──『エンジェル ウォーズ』(佐々木友輔)
- 否認する男たち──『マン・オブ・スティール』(noirse)
- アルテミシアの光と影──『300〈スリーハンドレッド〉~帝国の進撃~』(佐々木友輔)
- ニューメディア・リアリズムの誕生──『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(佐々木友輔)
第Ⅱ部 二一世紀ハリウッド映画論
4 異世界旅行の先導者たち
- 復路の旅──現代映画のための物語(佐々木友輔)
- ポリフォニック・シネマの方へ(noirse)
- 終わりに──マルチブートの生存学(佐々木友輔)
本書で論じる主な作品
『X-MEN:アポカリプス』(ブライアン・シンガー、2016年)
『君の名は。』(新海誠、2016年)
『ゴーストバスターズ』(ポール・フェイグ、2016年)
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(ルッソ兄弟、2016年)
『10クローバーフィールド・レーン』(ダン・トラクテンバーグ、2016年)
『ドクター・ストレンジ』(スコット・デリクソン、2016年)
『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド、2016年)
『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影「シャドウズ」』(デイブ・グリーン、2016年)
『ラ・ラ・ランド』(デイミアン・チャゼル、2016年)
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(ジョス・ウェドン、2015年)
『エクス・マキナ』(アレックス・ガーランド、2015年)
『X-MEN:フューチャー&パスト』(ブライアン・シンガー、2014年)
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(ダグ・リーマン、2015年)
『オブリビオン』(ジョセフ・コシンスキー、2014年)
『トランスフォーマー/ロストエイジ』(マイケル・ベイ、2014年)
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、2014年)
『ブラック・ハッカー』(ナチョ・ビガロンド、2014年)
『アフター・アース』(M・ナイト・シャマラン、2013年)
『her/世界でひとつの彼女』(スパイク・ジョーンズ、2013年)
『アベンジャーズ』(ジョス・ウェドン、2012年)
『リヴァイアサン』(ルーシァン・キャステーヌ=テイラー、ヴェレナ・パラヴェル、2012年)
『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(マイケル・ベイ、2011年)
『ミッション:8ミニッツ』(ダンカン・ジョーンズ、2011年)
『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(ジョー・カーナハン、2010年)
『アバター』(ジェームズ・キャメロン、2009年)
『G.I.ジョー』(スティーヴン・ソマーズ、2009年)
『アイアンマン』(ジョン・ファヴロー、2008年)
『ダークナイト』(クリストファー・ノーラン、2008年)
『トランスフォーマー』(マイケル・ベイ、2007年)
『デジャヴ』(トニー・スコット、2006年)
『レディ・イン・ザ・ウォーター』(M・ナイト・シャマラン、2006年)
『エレファント』(ガス・ヴァン・サント、2003年)
『タイタニック』(ジェームズ・キャメロン、1997年)
『エンド・オブ・バイオレンス』(ヴィム・ヴェンダース、1997年)
『ロスト・ハイウェイ』(デヴィッド・リンチ、1997年)
八王子Short Film映画祭セレクション上映(異類婚のエスノグラフィー)
八王子Short Film映画祭のセレクション上映が、ニュー八王子シネマのイベント最終日に開催されます。昨年、同映画祭で審査委員特別賞をいただいた『異類婚のエスノグラフィー』(佐々木は脚本を担当)の上映もありますので、近くにお住いの方はぜひご覧ください。
八王子Short Film映画祭セレクション上映
2017年4月2日(日)
第1部 開場:13時半 開演:14時
第2部 開場:16時半 開演:17時
会場:ニュー八王子シネマ シネマ3(3F)
東京都八王子市横山町13-4
◆ 第1部 開場:13時半 開演:14時
『テイク8』『ファーザー×ファーザー』『エンドロールを撮りに』『結婚騒選挙』『異類婚のエスノグラフィー』
◆ 第2部 開場:16時半 開演:17時
『悪しき客人』『Kinky Love』『不旋律のソナタ』『だんらん』『I’m your daughter.』
料金:1日パス1,500円(午前上映イベント&第1部・第2部通し)
第1部のみ、第2部のみは各1,000円 ※それぞれ当日券のみとなります。
生きるためのダンス
2017年3月16日(木)から31日(金)まで、JR東日本が運行する「生きる支援トレイン」で、私が撮影・編集した動画が流れています。振り付け・ダンスはハラサオリさん。
NHK×JR東日本生きる支援キャンペーン 「生きる支援トレイン」
2017年3月16日(木)~31日(金)
ポスターと動画は、以下のウェブサイトで見ることができます。ウェブ動画版「生きるためのダンス」には、田中文久さん(作曲)と角銅真実さん(歌)によるテーマ曲も付いています。
また、3月29日(水)放送の「生きるためのテレビ」でも、私の撮影した映像が素材として使用されます。再放送は4月5日(水)。
生きるためのテレビ あした、会社に行きたくない―“働く自分”と折り合う―
あわせて、作り手からのメッセージがハートネットTVのブログに掲載されています。
【生きるためのテレビ】NHK×JR東日本 「生きるためのダンス」に込められた思い | ハートなブログ | ハートネットTVブログ:NHK
『この世界の片隅に』の風景
前のエントリにも関連するが、映画『この世界の片隅に』の息苦しさは、風景の解像度の高さに因る。「保存再生癖」、「アーカイブ構築癖」とでも言うべきその欲望は、画面に映る風景をその片隅まで、隈なく凝視せよと観客に迫る。
そこに映る風景は、風景のプロが見る風景だ。そしてそれゆえ、その風景は常に日常の風景からは遠ざかり続ける。ほんらい、わたしたちの日常的な場所の経験は、気散じ的な、無自覚で対象化未然の目の利用によって構成されているのであり、その意味では、ここには「日常」も「片隅」もない。焦点の合わないものこそが「片隅」と呼ばれるべきではないか。
『この世界の片隅に』の風景は、民族資料館などの「当時の生活再現ブース」にかぎりなく接近している。「次はこれをご覧ください、これはこのように使うものです、ちなみに当時はこういうこともありました……」主人公の要領の悪さを利用して、登場人物たちがていねいに展示物のキャプションを読み上げてくれる。物語にもまた、逃げ場のない、徹底した対象化の欲望が充満している。
小田原のどか個展「STATUMANIA 彫像建立癖」について
小田原のどか個展「STATUMANIA 彫像建立癖」
会期:2017年3月4日(土)-3月19日 (日)
時間:平日 13:00-20:00/土日祝 12:30-20:00
会場:ARTZONE
企画:京都造形芸術大学ARTZONE
現在開催中の小田原のどか個展「STATUMANIA 彫像建立癖」については、すでに優れた評論が寄せられているので(「爆心地のネオンサイン」 )、ここでは個人的な雑感を記しておくことにする。
展示会場に足を踏み入れて、いまはもう存在しない、しかし写真やネオン管の彫刻として復元された無数の矢印に出迎えられ、まっ先に想像したのは映画『リング』だった。呪いのビデオテープにおさめられた、なにかを指差す不気味な人影。人間が立っているから怖いのではない。指を指しているから怖い。
これを見ろ。目を離すな。忘れないで。覚えていろ……
二階に上がると、今度は黒沢清の『リアル~完全なる首長竜の日~』だ。ガラス管でかたちづくられた台座を支えるケーブル、バンド、配線のようなもの、黒いボックスが剥き出しになっている。『リアル』に登場する、意識を失った者と交信するための「センシング」装置。あるいは『秘密 THE TOP SECRET』に登場するMRI捜査の装置を思わせる光景が、目の前にひろがっていた。
会場全体が、まるでマッドサイエンティストの実験場のようだ。死者を生き返らせる装置ではなく、脳に電気信号かなにかを流して、死んだままの身体だけを叩き起こす装置。人工的なゾンビたちがうごめく風景。
しかしそれは作家個人の趣好などではなく、人類全体の趣好なのだ。展覧会タイトルは「彫像建立癖」だが、もっと広くとらえて、「保存再生癖」、「アーカイブ構築癖」と読み替えてもよいのかもしれない。小田原は少し引いたところから、その欲望が生み出したものを冷静に見つめている。
これを見ろ。目を離すな。忘れないで。覚えていろ……
そう語りかけてくるのは、死者ではなく生者であった。おそろしいのは幽霊ではなく、死者に鞭打ち動かし続けようとする、生者たちの情念であったのだ。記憶と記録は常に不完全でしか有り得ず、それゆえ、その欲望はどこまでも、いつまでもわたしたちにつきまとう。しかしつきまとっているのもまた、わたしたち自身である。
(念のため、上記のおどろおどろしい話は、なんでもホラー的に見てしまう筆者の傾向が多分に反映された結果であって、展示自体は決して観客を脅かすようなものではなく、洗練された、落ち着いた空間だったことを記しておく。)